2026年7月2日 - ボランティア「響」ブログ
2026年7月2日 18時13分29秒 (Thu)
小児がん議員勉強会と新薬開発の要望書の提出について
先ごろ、与党議員有志による「小児がん新薬開発プラットフォームの構築に関する要望書」が厚生労働大臣へ提出されました。
この要望書は、多くの患者団体や医療関係者、研究者、製薬企業、行政、そして国会議員の皆様のご尽力によって実現したものです。その一方で、当会が一昨年から続けてきた国会議員への請願活動も、その流れの一端を担うことができたのではないかと感じています。その経緯を記録として残しておきたいと思います。
H3 K27M変異を伴うびまん性正中グリオーマ(DMG)に効果が期待されるOP-10(ONC201)は、世界で初めて実用化が期待されているDMG治療薬です。日本では大原薬品工業のご尽力により、米国と大きく遅れることなく治験が進められていました。
しかし、治験がフェーズ3へ進む段階で、対象からDIPG患者が除外されるという事態が生じました。
そこで2024年12月、私たちは衆議院議員・永岡桂子先生にご相談し、「人道的拡大治験」の実施を求める請願を行いました。当日は、まさに闘病中のお子さんのご家族にもご同席いただき、命と時間に追われる現実を議員に直接伝えていただきました。
その後、未承認薬であるOP-10は、国立がんセンターのご尽力により、PARTNER試験という形で一定条件のもと使用できるようになりました。しかし、生検が参加条件となったことで、時間的・身体的な負担が大きく、希望しても参加できるのは約半数にとどまるという課題が残りました。
そこで2025年8月には、地元選出の衆議院議員・柴山昌彦先生へ、PARTNER試験の条件緩和を求める請願を行いました。
永岡先生とは、SNSで切実な思いを発信していた患者家族の声をきっかけにご縁が生まれました。また柴山先生とは、地元の駅前で私たちが開催するレモネードスタンドへ毎回足を運んでいただき、励まし続けてくださったご縁がありました。
小児がんに関する請願では、厚生労働行政に詳しい元医師などの議員へお願いするのが一般的です。しかし、そうした議員は数多くの医療課題を抱えておられます。むしろ専門外であっても、「子どもの命」という課題そのものに共感してくださる方がいるのではないか・・そんな思いもありました。
お二人とも本来は文部科学行政等を専門とされる議員でしたが、私たちの話に真摯に耳を傾けてくださり、たとえ請願そのものが実現しなかったとしても、この問題を厚生労働省へ届ける大きな一歩になると感じました。
その後、大原薬品工業によるOP-10の承認申請が実現し、2026年中の承認も期待される状況となりました。しかし、それでも現在治療を待つ子どもたちにとっては、時間との闘いであることに変わりはありませんでした。
そんな中、闘病中のご家族自らが署名活動を始め、約6万筆もの署名を集められました。その行動力には心から敬意を抱く一方で、一分一秒でも我が子と離れず過ごしたいはずの親御さんが、自ら社会へ訴えなければならない現実に、当会の活動が未だ皆様の期待に応えられていないことを痛感した出来事でもありました。
私たちも次の一手を模索し、CAR-T療法の国内実施の可能性を医師へ相談したり、将来的には迅速に要望を政策に反映させるための小児脳腫瘍議員連盟のような枠組みが必要ではないかと、志を同じくする仲間たちと議論を重ねていました。
しかし、その頃すでに、永岡先生と柴山先生は、自見はなこ先生と連携し、小児がん・難治性希少がんの研究を前進させるための方策を具体的に検討してくださっていたのです。
その成果として開催されたのが、先月の「小児がん治療等推進勉強会」です。
勉強会には、自見先生をはじめとする国会議員、国立がんセンターや国立成育医療研究センターの医師、製薬企業、厚生労働省、大学関係者、患者団体が参加し、小児がんのドラッグラグや研究開発の課題について、それぞれの立場から率直な議論が行われました。
名称は「小児がん」でしたが、議論の内容は、DIPGをはじめとする小児難治性希少がんを強く意識したものだったと感じています。私たちとしては、これまで患者家族が訴え続けてきた課題が、政策の場で本格的に議論され始めたことを実感する機会となりました。
勉強会では、ドラッグラグの問題について国としても長年取り組みを進めてきたこと、一方で、希少疾患であるがゆえに研究費や人材、採算性が期待できない製薬企業へのインセンティブなどが依然として不足している現状が共有されました。
また永岡先生からは、厚生労働省だけでなく、文部科学省による大学研究や若手研究者育成への支援も重要であるとの提言がありました。
さらに、小児がん拠点病院の集約化についても議論されました。これは患者の医療機会を減らすためではなく、希少疾患の患者を集約することで臨床試験や高度医療を実施しやすくすることが目的であり、その趣旨は正しく理解される必要があると感じています。
こうした議論を経て取りまとめられた要望書が承認され、6月30日、自見はなこ先生をはじめとする関係議員から厚生労働大臣へ提出されました。
そのセレモニーには私も参加を許され、患者家族の立場から大臣への発言の機会をいただき、一日も早い治療開発への期待とともに、たとえ命が救われても、小児がんは晩期合併症や社会復帰など、その後の人生に大きな課題を残すことが少なくないことをお伝えし、小児がん子どもたちへの総合的な支援をお願いしました。
その後の記者会見では、この15年間で少なくとも600人以上の子どもたちがDIPGによって命を落としていること、そして、その現実をもっと社会に知っていただきたいことを訴えました。
今回の勉強会と要望書提出を契機として、厚生労働省において難治性小児希少がん研究への予算措置や研究支援がさらに前進することを期待しています。
改めて、自見はなこ先生、永岡桂子先生、柴山昌彦先生をはじめ、ご賛同くださった国会議員の皆様、そして患者団体、医療関係者、研究者、製薬企業、行政の皆様に深く感謝申し上げます。
もちろん、当会だけではなく、他の支援団体の皆様の活動の積み重ねがこれを実現させたことを記しておきます。
以上のような経緯もあり、DIPGという病気は、この数年で厚生労働省内でも確実に認識が深まってきたと感じています。今回の要望書が、その流れをさらに後押しし、意欲ある研究者が新たなDIPG の研究を提案し、国がそれを支える契機となることを心から願っています。
とはいえ、PARTNER試験への条件緩和は実現しておりませんし、現時点でできる治療は極めて限定的という状況は続いています。その実効性を今後検証していく必要があるでしょう。
その指標の一端が、やはりOP-10の早期の承認となるかと思います。これが承認されれば、単剤使用のみならず、例えば放射線との併用の臨床試験など、他の既成の薬剤との併用試験が立ち上がれば、DIPG患者にいくつかの治療選択が生まれる可能性があるからです。
今回提出された要望書は決してゴールではありません。子どもたちに一日も早く新しい治療を届けるための、新たなスタートです。
小児がんは多種多様であり、治療の側面だけでなく、抱える課題も多岐に亘ります。議員勉強会は、今後ともこれらの小児がんの諸問題を議論する場として継続いただけるとのことです。私たちも患者家族の立場から、この流れを止めることなく、引き続き努力を続けてまいります。
※報告書
※TV報道
小児がん治療薬の「ドラッグ・ロス」解消を 自民議員らが厚労省に要望(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
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