ボランティア「響」ブログ
2022年4月23日 23時13分58秒 (Sat)
父親限定 グリーフオンライン交流会
2022年4月23日(土) 21:00~22:30 参加者4名、司会 貫井 アシスタント 須賀
「男は泣いてはいけないと父親から言われて育った」
・・・そんなお父様たちが、目に涙をためながら、天使となったお子様たちのお話をしてくれました。
「父親限定」で亡くなったお子様のことを語り合うグリーフオンライン交流会を行いました。
この企画をやろうと思ったきっかけは、オンラインで参加したグリーフケアセミナーでした。講演後の質疑応答で、「お母さんたちは、経験者同士で語り合うことによって癒される部分もあるけど、父親はそうはいかない部分もある。父親のグリーフケアはどうするべきでしょうか」との質問に、「いえ、ところがそうでもないですよ。オンラインは便利ですね。先日、日本全国からお父様に集まってもらって交流会をやったところ、皆さん、もう、語る、語る・・・お母さん以上でした」という返答をいただき、これは、一度やってみる価値はあるかも!!と思い立ち、その1時間後には企画を立ち上げていました。
とは言っても果たしてうまく行くのだろうか・・・人前で悲しい子どもの闘病を語ってくれるお父さんはいるのか。半信半疑の企画でしたが、結果、6名の申し込みがあり、4名が参加されました。
そして、当日、お父さんだけのグリーフ交流会は可能か・・・。そんな疑念は、始まってすぐに解消しました。
高校生に最後まで病名を告げられなかったお父さん、仕方なかったと半分納得しつつ、でも告げていれば何か希望の生き方をさせあげられていたのではないか・・・。
6年に亘った闘病、年頃のお嬢さんでした。ああ、この子の人生は何だったんだろう、この年頃らしく、恋愛もしたかったろう・・・と、死後思っていると、何と彼氏の存在が発覚、お葬式に訪れた「彼」は、とても良い青年で・・・。花嫁姿を想像するお父さん・・・。
家族と離れて、頑張って新規治療にも挑んだ。こんな状況でも、なかなか仕事を休めず、やっと取った休暇の直後に息を引き取り、後悔を口にするお父さん・・・。
とにかくDIPGの残酷さ、過酷さ・・こんな病気になぜ我が子が・・・。深い深い悲しみに目頭を拭うお父さん・・・。
それぞれの悲しみ、私も同じ父親として、共感できるお話ばかりで、かなり感情移入してしまいました。
お母さんのだけの交流会も何度か行っていますが、涙と気丈さが交互するそれとは、少し違って、お父さんが語ると、何か独特の哀切さが醸し出されて、こちらも胸に染みます。
それにしても、やはり共通するのは、このDIPGという病気の厳しさ・・・。容赦無く幸せな家庭を襲い、ご本人はもとより、ご一家の夢を奪っていく・・・。それを再認識させられました。
最後に闘病当事者の当会のスタッフの須賀さんが、
「どうか、ご自分を責めないでください。お子さんたちは、しっかり治療を受け、それを見守ってもらって、きっと感謝しています」
と語りかけ、それに皆さんが深く頷いているのが印象的でした。
今回、この闘病経験から、子どもホスピス建設を夢見るお父さんもお二人もいらっしゃり、静かにその情熱を語られていました。
・・・そう、お父さんたちはいつかどこかで、この病気の借りを返すでしょう。
男はただメソメソするだけに終わらず必ず立ち上がるものなのです。
私たちもそれを応援していきたいです。
2022年4月18日 1時11分52秒 (Mon)
オンライン講演会「いのちと向き合う家族」を開催
オンライン講演会「いのちと向き合う家族~きょうだいケアを中心に~」が、4月17日(日)14:00~15:45の日程で行われました。参加者15名。
NPO法人 しぶたねの理事である清田悠代さんをお迎えし、オンライン講演会を開催しました。
私が清田さんとその活動を知ったのは、2012年の小児がん学会での講演会でした。2012年・・・10年前ですね。この会を立ち上げて間も無くの話となります。その講演会を見た時、そう
か・・・子どものがんの闘病によって、そのきょうだいにも色々負担がかかっているのだな・・と、初めて気付かされました。うちは、一人っ子だったので、そこへの想像力があまり働いてませんでした。
VOICE 2014版を制作するに当たって、病気の解説と共に、重要と感じていたのはQOLの面でした。また、家族への精神的なケアなどの必要性も感じていた事から、ここは、ダメもとで清田さんに依頼してみるしかないとメールを送らせていただきました。心よく快諾していただき、出来上がって来た原稿は、お読みいただいた方はご存知のように、その文章内容に寄り添ったようなとても優しい言葉遣いと文体で、他の原稿とは違って、その部分だけ別空間のような感じになりました。
制作中に、特に印象的だったのは、「おじいさま、おばあさま」という言葉があり、校正で私は、「ここは祖父母でいいんじゃないですか? 他の経験談でもその様に統一していますし・・・」と、ご指摘したところ、「いぇいぇ、私はおじいさま、おばあさまという呼び方が大好きなんです。なんか温かいイメージで・・、できるだけそうしたいのですが・・・」と、言われ、いたく納得した思い出があります。完成文を読み進めると、かなり深刻な話題なのですが、何となくふんわりと温かい毛布に包まれる様な感じを抱く、とても癒される記事となっていますよね。参加された方で、ぜひVOICEをお持ちの方は、改めて読み直してこの講演会を思い出してただきますと、しぶたねさんの温かいテイストが身にしみてくるかと思います。
さて、今回のイベントは、第一部として講演会、第二部として質疑応答というプログラムでした。
講演では、これもゆったりとした癒されるテンポできょうだいさんケアの活動の状況と、きょうだいさんをめぐる様々な精神的な状況とそれへの対応のヒントを教えていただきました。その言説の基調には、「あなたはもう充分偉いし尊い」といった、子どもたちへの揺るぎない真の敬意・尊敬を感じました。多くの子どもたちとは、ちょっと違う運命を背負わざるを得なかった子どもたち・・・。その様な子どもたちと、その親御さんの気持ちに、どこまでも寄り添っていこうという姿勢は並大抵な覚悟でできる事ではないと思います。
その具体的講演内容は、今回、しぶたねさんのご好意により、講演会部分の配信をご承諾いただきましたので、このブログをご覧いただいた皆様限定で特別公開しております。ぜひトップページをご確認ください。
第二部として、ご参加の皆様との質疑応答を行いました。色々なやりとりがありましたが、お子さんを亡くしたお母様や、この先に大きな不安を抱えた闘病中のお母様の心情に寄り添い、時には、少し清田さん自身も涙を見せながらのアドバイスをいただきました。
当会では、今回、SNS等でも質問を募集していました。2ついただきましたので、それについての回答を以下に記します。
Q1、私が兄の闘病で24時間付き添いで、夫は夜勤があり、実父母に当時3歳の娘を預けました。実父母は愛情いっぱいに接してくれたと思いますが、退院して1年余り、妙なところで 聞き分けが良かったり、まだ私に遠慮している部分が見えます。今も兄のリハビリや通院などで実父母に預けることがあります。今、私が、娘にしてやれることは何でしょうか。
A1、3歳のお子さん、きっととっても可愛いでしょうね。離れて過ごさなければならなかったお母さんも寂しかったでしょう。
「寂しかったよね」とか、「頑張ってくれたんだよね」と伝えて、互いの気持ちが見えやすくなるといいですね。おじいちゃん、おばあちゃんに預けたという事ですが、子どもは長くお世話してくれた人に懐くということがあり、会った時におばあちゃん子になってショックだったという話もありますが、子どもの本能として自然な事なので、そういうものと思ってあげた方がいいですね。
何もしてあげられなかったと思われているが、そういうことはないからお母さんがそんなことは思わなくて良いですよ。
遠慮している様子が見えたら、「遠慮してるのと?」 そのまま伝える。「会えなくて寂しかった?」 と素直に伝える事で、お子さんもママも寂しかったと分かる。理解し合えるのだと思います。
預けたおじいちゃんおばあちゃんにも預けた時の様子を聞いてみてください。お子さんの寂しそうな瞬間もあったと思うので、そんな様子聞いて、お子さんの気持ちを把握してみるのも大事かも知れません。
Q2、12歳の娘さんの場合、生命に関わる病気のきょうだいの告知はどこまでどの様にしたらいいのでしょうか。進学時期で環境が変わるので、あまり心を乱して精神的に不安定になってもと思うのですが。病気の進行に沿って話した方がいいか。どの様にケアしたら良いか。
A2、色々なことが考えられ、その子それぞれとしか言えないこともあり、とても難しいのですが、私たちが子どもたちの経験を聞いた範囲では、ご病気のことを知らされなかった事で、後に後悔する場合が多い様です。
言うタイミングに関しては、その子をよく分かっていらっしゃるお母さんが良いと思ったタイミングで良い。今ではないと感じたらそういったタイミングではないのかも知れません。お母さんはこれこれこういうことを思って、あなたが辛く感じると思ったから、その時ではなく、このタイミングで話すことにしたと、ちゃんと伝えていく事が、もしかしたらその子にとって安心かなと思います。
また、親御さんだけで判断するのは難しい場合は、病院の医師や相談員等に相談してみるのもいいかも知れません。色々なご経験をされているので。
また、病気のご本人にはどこまで伝えているかにもよります。きょうだいだけが知っている様な事柄が出来てしまうと、家の中で話してはいけない事が出来て、それが辛く感じてしまうきょうだいもいます。お互い話して良いことが揃っていることも大事かなと思います。
以上でした。
その他、質疑応答の中で、印象に残った言葉を以下に記してみます。
・きょうだいが病気になって、色々な気持ちや態度をとることは、決して変な事ではなく、ある意味、当然のこと。親御さんが、お子さんのことをいつでも考えているし、分かっているよと伝わる事によってきょうだいさんの心が落ち着く場合もあります。
・何かきょうだいげんかなど良く起こる時は、何か発散できる遊びなどすると良いかも。
・お母さんがきょうだいをよく見ていることはすごいことです。
・時々、家族会議的なことをやってみるのも良い。
・色々我慢してしまっている場合は、親御さんがちょっと弱音を言う事によって、きょうだいも、色々遠慮なく話したりしても良いのかと思う。
・家族が病気になった前と後でお子さんの存在そのもが何かが変わるという事はない。
・お子さんを亡くして、精神的にいっぱいで、何もケアしてなくても、きょうだいのことを思っているよと伝えることが大事。
・きょうだいさんの中には、泣くとお母さんが心配するからと我慢することもあるが、一緒に泣く事によって、泣きたい時は、泣いても良いんだよといった雰囲気を作ることができる。
お子さんが亡くなった子のことを話してくるのが辛くなる時がある。そのことでお子さんを傷つけていることもあるのかも・・の質問に、
・こんなに悩んでしまうぐらいお子さんのことを思っているのに、お子さんを傷つけているわけはないですね。
・亡くなったきょうだいさんのものだけではなく、自分の好きなおもちゃで遊んで良いんだよという事を勧めてみてください。
・小さいお子さんの世界は、おうちの中にしかないから、亡くなったきょうだいさんのことをいつまでも思っているということもありますね。
・どこのタイミングできょうだいの病気を話すかは、親御さんの判断ですが、その結果心が不安定になることは、ある一定の範囲なら自然なこと。それを越えて睡眠が取れないとか食べれないなどの健康面で不安がある場合は、カウンセラーとか病院を頼ってみる、そういった選択肢を持っておくのは、全然ありだと思います。
・親御さんは悩んで決めたことは正解です。
以上、思い出せるだけですが、書いてみました。
今日、交わされたこれらの言葉の中に、きょうだいケアを含む、「いのちに向き合う家族」のためのケアに関する大切なヒントがきっと沢山あるのではないかと思います。
今回、親身になって質問にお答えいただいた清田さんとシブレンジャーさん、そしてご参加の皆様ありがとうございました。
また、イベント全体を仕切っていただいた神門さんのプロフェッショナルな司会が本当に素晴らしかった事も最後に付け加えておきます。
本当にありがとうございました。
2021年12月18日 20時50分35秒 (Sat)
横浜こどもホスピスプロジェクト うみとそらのおうち見学

昨今、終末期の子どもの療養のための施設「こどもホスピス」の重要性が認識されはじめ、建設の動きが全国で起こっています。
その先駆けともいえるのが、田川尚登氏が代表をつとめる「横浜こどもホスピスプロジェクト」です。横浜にこどもホスピスを建設するのを目的とするこの計画は、2014年のスタートから実に7年の年月を経て、ついに実現に至りました。
そもそも、田川氏がホスピス建設を志したのは、1997年に脳幹グリオーマによって娘さんが6歳半でその生涯を終えたことがきっかけです。
その闘病経験を経て、余命わずかなこどもとそのご家族が、楽しく有意義に生活できる場を作りたい。残された時間を思い切り輝かせる場としてのこどもホスピス・・それは、いかに最期を看取るかではなく、どのように、こどもたちが生を全うできるかということ。その手助けとなる施設の実現こそ、娘さんが残した宿題なのではないか。
・・・田川氏は、その考えに至り、2014年に同じくこどもホスピスの実現を願う看護師の1億円の遺贈を受けたことで、計画は走り出しました。
建設運営資金3億円を目標に募金やクラウドファンディング、チャリティーコンサートなどを精力的に行い、その過程で様々な人材や企業を巻き込み、実現ににじり寄っていきました。そして、2018年に資金目標を達成し、2021年1月に建設工事がはじまり、11 月についにオープンに至りました。本当にこれは、快挙であり、1人の強い思いが発火点となり、ネズミ花火のように、次々と関わる人々の胸に火を灯し、大きな力を結集することに成功させて始めて実現した奇跡でしょう。
その様々な人々の思いが結集した施設「うみとそらのおうち」を先日、見学することができました。
本当にこれは、沢山の職種の方が、自らの経験を反映させるべく何度ものディスカッションを繰り返し検討され、設計された素晴らしいホスピス施設としか言いようがありません。
壁から柱からドアから、本当の意味での「愛」だけが宿っている家だと感じ、その設備のひとつひとつに感動して内心泣きながら見させていただきました。
微に入り細に入り、利用者に寄り添った、様々な創意工夫が実現されています。
特に温泉?並みの大きなお風呂と浴槽は、アンケート調査の結果、家族でやりたい事の上位となった家族みんなでの入浴を実現させるために設計されたということで、本当に気持ち良さそうな空間となっていました。川沿いの景色も絶品で、その壁にはプロジェクターで映像も投影できるという、まさに至れリ尽くせりとなっています。また、各ベッドルームの天井には、レールが敷設されており、身体の自由が効かないお子さんを吊り上げて移動も可能となっています。リビングルームの照明は、星座の形に配置されているといった何気ないところにも隙なくアイデアが配されています。
新築の真っ白な壁は、年月を経ることによってこども達のお絵描きキャンパスになっていくことが予想されますし、施設全体に次第に暖かい生活感が宿ることになるでしょう。今後、様々な場面がこのホスピスで紡がれていくでしょう。また、この「うみとそらのおうち」は、全国に広がっているホスピス建設の見本となっていくと思います。
今回、見学させていただき、人間の一途な思いを貫くことで達成できることは、無限大だなと思いました。大切なのは強い思いと決して諦めないこと・・そして、この事は、私たちのような活動への励ましと同時に、現在、この病気と闘っている子どもたちとご家族への田川さんを介して、天から見守っている娘さんが届けたメッセージなのではないかとも個人的に感じました。
この施設建設に関わった全ての皆様に心より感謝と敬意を表します。
2021年5月1日 12時35分13秒 (Sat)
がん治療用ウイルスG47Δの認可について厚労省を訪問
現在承認申請中の東大のがん治療用ウイルスG47Δについて、厚生労働省を訪ね、担当者に適用範囲の拡大を要望しました。
成人の膠芽腫患者への臨床試験に於いて、良い効果を得ての今回の承認申請ですが、開発者によれば、この治療法は悪性神経膠腫全般への治療の可能性を秘めているということで、今後について厚労省側との意見交換を行いました。
あまり例のない国産の技術ということで、期待も大きい治療法です。しかし、逆にその認可等に対する責任も大きいので、当局もより慎重な段階を踏んで許可していきたい考えもあるようです。
しかし、我が国では、諸外国と比べ、その治療の選択肢が限られている現状もあり、勇気を持ってチャレンジしたいと考える患者さんも多くいらっしゃるという面もありますし、その思いは決して無視できないと思います。
脳腫瘍ネットワークのスタッフお二人と当会の二人で、患者家族の思いと現状をもとに、小児患者や、現在、比較的限定的な病状への認可となることから、その適応範囲の拡大を訴えさせていただきました。
なかなか一朝一夕に現状を変えられませんが、今後も粘り強い陳情活動によって当事者である患者側の意見を行政に伝えていければと思っています。

2019年1月27日 3時16分16秒 (Sun)
第二回 「小児脳幹部グリオーマ」シンポジウムが開催されました。
2018年10月21日に開催された、第二回「小児脳幹部グリオーマ」シンポジウムの報告です。
●第二回開催の主旨
今回のシンポジウムでは、昨年の第一回からの議論の流れを引き継ぎ、「小児脳幹部グリオーマ」の「治療研究開発の現状及び課題」、そして闘病患者、並びに家族への医療的、精神的ケア等いわゆる「緩和ケアの在り方」について第一部、第二部に分けて議論を行いました。
専門家の講演、パネルディスカッションをもとに、そこで提議された各問題点について、広く来場された参加者の皆様にも考え、議論を巡らせていただく。その事によりこのDIPGという病気に関する理解を深めていくと同時に、登壇された専門家とともに「自分の事」として問題点を共有していただくことが出来ないだろうか・・・という目的で今回のブログラムを企画致しました。

●シンポジウムの内容
冒頭、司会による開催の言葉の後、代表 高木よりの前回のお礼と今回の協力者、参加者へのお礼のご挨拶がありました。
次に衆議院議員 とかしき なおみ氏による開催への祝辞があり、登壇いただく専門家を代表して慈恵会医科大学病院の柳澤隆昭先生よりの挨拶、そしてその後に、昨年の第一回のシンポジウム内容の復習が国立成育医療研究センターの寺島慶太先生よりお話いただきました。
第一部「DIPGにおける日本の治療開発」
海外の研究の現状と国内において行なわれている研究についての講演を国内外、お二人の先生にお願いしました。
◎橋詰倫太郎先生講演
(ノースウェスタン大学医学部 脳神経外科・生化学分子遺伝学科 准教授)
以下のようなテーマでの橋詰倫太郎先生によるビデオ収録による講演を行いました。
・海外でのDIPG治療研究
・薬剤開発に関わる基礎研究
・海外と日本の製薬企業におけるDIPG治療・研究開発の比較
・国際共同治験の推奨
主な内容を簡単に要約します。
◎海外では近年の遺伝子解析技術の飛躍的進歩により、DIPGにおいて「ヒストン蛋白」という分子設計に関わる遺伝子における特徴的な遺伝子変異が高い確率で発現している事が発見されるなど日々、研究が進んでいる。
それとともに、研究論文の増加や、新しい臨床試験が数多く立ち上がっている。
◎DIPGの特徴は遺伝子変異が少なく免疫療法が効きにくい。また、腫瘍細胞遺伝子の「不均一性」が著しく、腫瘍内の多様性が、一つの薬剤では効かない要因となっている。よって多剤併用が必要となってくるが、異なる薬品会社の利害に関わる。しかし、そうは言っていられない。従来の企業の利害を超えて一刻も早い治療の確率が望まれるという危機感により他剤併用の臨床試験を積極的に推進している研究者も多くなっている。
◎薬品を患部に届かせるには「血液関門」という直接血管から異物が脳内に侵入しないようにするバリアの存在をどうするかという問題がある。そこで血管を介さず、カテーテルを脳に挿入し、直接薬剤を患部に届けるCEDという技術の研究が進んでいる。
◎希少疾患であるDIPGは、臨床試験に参加できる患者数が少ない。世界各国が連携して参加していける形を作る事やデータの共有等協力していく事が必要。
◎そもそもこういった治療研究開発には莫大な資金が必要になる。欧米では民間の支援団体が大きな組織を構成しており、資金集めが活発に行なわれている。患者の子ども達が自らスポーツ会場などで募金を募るといった光景も少なくない。まさに単なる慈善といったレベルではなく、「がんとの闘い」といった位置づけで活動している。日本も見習うべきではないか。
欧米での非常にアクティブでかつ、しっかりと制度化、組織化された治療研究環境は、大変うらやましく感銘を受ける内容でした。
日本ではまだ、毎年の実際の患者数さえも正確に把握できていません。
しかし、その環境の根底には、「希少疾患」であることからくる、「製薬企業の利益の問題」があり、この病気に限らず、小児疾患に関わろうとする製薬会社が成人のそれらに比べて皆無という状況があると思います。
「市場原理」では解決できない場合は「国」に期待しますが、少子高齢化の中、多くの医療行政の課題や多種多様な難病がある中、予算は限られるでしょう。
ならば、欧米のような民間支援団体を立ち上げ「闘っていく」という事も考えなくてはなりませんが、それが成功するためには、国を動かす過程でも同様ですが、国民一般への啓蒙、啓発活動という事を一層推進しなければならないでしょう。この事は患者会組織としてもしっかり考えて行かなければならないと思います。
◎齋藤竜太先生講演
(東北大学脳神経外科 講師・病棟医長)
齋藤先生の講演は、はじめに脳腫瘍の外科治療がどういったものか、よくマスコミ等で「神の手」といわれるような限局性の脳腫瘍手術が報道されますが、それらと比べての悪性びまん性腫瘍の手術の困難さを実際の手術映像等も含め詳しく解説していただきました。
その後、外科治療に対する化学療法の有用性をお話しいただきました。橋詰先生の講演にあった「血液関門」の課題に対して、先生が現在、進められている、国内でのCED治療研究に関しての詳細を講義いただきました。
アメリカでの橋詰先生の研究にも一部関わってこられたということで、アメリカのような潤沢な研究環境にない国内の状況の中、マウス実験から始まった粘り強い研究の流れが語られました。その成果もあり、一部の脳腫瘍には著しい成果を上げているものもあります。DIPGへの治療に関しては、まだそれらに比べ成果といえる結果は出ていないが、確かに今後の可能性を感じられる治療法だと思いました。
国内の限られた条件の中での新規治療の研究開発は、決して不可能ではないという先生の言葉に、感銘を受けました。
◎バネルディスカッション
バネリスト
衆議院議員 とかしき なおみ氏
東北大学脳神経外科 齋藤 竜太先生
国立がんセンター 脳腫瘍連携研究分野 外来研究員 中野 嘉子先生
大阪総合医療センター 小児医療センター長 兼 副院長 原 純一先生
大原薬品工業株式会社 常務執行役員 研究開発本部長 早川 穣氏
厚生労働省 健康局・疾病対策課 がん対策推進官 丸山 慧氏
モデレーター
国立成育医療研究センター
小児がんセンター 脳神経腫瘍科 診療部長 寺島 慶太先生
お二人の講演内容を受け、6名のバネリストによるバネルディスカッションを行いました。主な議論の要旨を列記します。
日本の小児がんの薬品開発についての課題というテーマですが、そもそも日本での小児がんの薬の研究開発は皆無であるというお話から始まり、やはり、その理由として「市場原理」があると。希少疾患の薬剤を開発しても企業の利益にはならない。欧米の法律のような何らかのインセンティブを薬品会社に与えるべきであるという意見。
また、近年立ち上がったJCCDは問題意識を持った国内の専門家が集まり小児がん研究を行なって行くということで、医師・研究者のあいだで現状を何とか前進させようとしている動きがあることも語られました。
また、希少疾患という事もあり、貴重な腫瘍データの情報共有等の制度化の確立も大事である。
海外では多くの臨床試験が確かに行なわれているが、残念ながら現段階では、橋詰先生の講演の中で、リストアップされたような海外臨床試験での薬剤のどれもが効果らしい効果を上げていない。有望なものが、もし見つかれば、希少疾患とう点もあり、臨床試験は可能である。だが、現状では何も無い。
各研究者・施設の努力で何とか研究開発を進めているものもある。しかし、現状の制度のもとではなかなか困難であり、政治の力で何とかならないか。
それには国民が声を上げ周知、啓発・啓蒙を行っていくことが何より必要。国としても子どもの命に関わる事は「市場原理」にばかり任せていてはならないという事は分かっている。また、橋詰先生の講演から、患者側が資金を積極的に集めて行くという事も必要であるというお話等、専門家による現状の問題点が語られました。
そして、今回も当シンポジウム開催に多大な協力をしていただいた参議院議員 羽生田俊先生のご挨拶を挟み、第二部がスタートしました。
第二部「DIPGにおける緩和ケアの在り方」
◎岡本真弓氏講演
(患者会家族)
第二部では近年、がん療養において大きくクローズアップされている「緩和ケア」について、その在り方について考えて行きました。
まず、患者家族のお一人として、息子さんとの闘病を経験した岡本氏に患者とそのご家族の視点から闘病を振り返っていただくお話をしていただきました。
7歳で発症した涼央君は、1年4ヶ月という闘病期間をどのように生きたのか?
入院から看取りまで、多くの記録写真で構成された講演でした。
標準治療である放射線治療からの寛解、退院しての学校、サッカーチームの友人たちとの交流、ごきょうだいのお姉さんの気遣い、
この事態に、どう心の整理をつけたらいいのか分からない中、なお、涼央君のために最良の環境を用意しようと奔走するご両親と医療チーム。末期はかなりの量のステロイドを用いたためか、ムーンフェイスの状態にあったが、それでも気にせず涼央君と接してくれた友人達。
在宅医療実現には、優れた在宅訪問医師との出会いがあり、かなり充実したものだった事が分かります。
最期の最期まで生を求めて闘った涼央君・・・・
「涼央は不運だったが、決して不幸ではなかった・・・」母である岡本氏のこの言葉が多くの聴衆の心に響いたに違いありません。
◎パネルディスカッション
パネリスト
参議院議員 羽生田 俊氏
埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 大西 秀樹先生
東京慈恵会医科大学付属病院 脳神経外科教授 柳澤 隆昭先生
医療法人財団はるたか会 理事長 前田 浩利先生
公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金 理事長・院長 楠木 重範先生
患者会 岡本真弓氏
デモレーター 国立成育医療研究センター 総合診療部 緩和ケア科 小児がんセンターがん緩和ケア科診療部長 余谷 暢之先生
岡本氏の講演内容を受けて、緩和ケア、在宅医師等の専門家によるパネルディスカッションを行いました。
モデレーターの余谷先生より、まず「緩和ケア」の定義について、身体的、精神的、社会的、スピリチュアルの面のケア、そして家族に対してのケアというアプローチがある・・これをどう行なっていけばいいのか・・という議論の基本認識が語られました。
以下、パネリストの議論の要旨を列記します。
闘病生活をどのように過ごすことが子ども自身にとって良いのかということを本人、ご家族、関係者が第一に考え、その目的に向かって必要な条件を整えて行くという考え方が必要。
現在のデータとして83%が病院、13%が自宅での療養。
子どもの場合は、本当は慣れ親しんだ自宅での療養が好ましい。きょうだいとの接触も病院ではままならない。
小児在宅医が不足している中、どう在宅医療を実現するか。その問題として、成人の在宅に比べ、小児の在宅・・まして小児がんという希少疾患を患った子どもの在宅に関して、現在、標準的な治療のガイドライン的な手引きが無いと言う事がある。これを早急に作っていきたい。
そういった手引きがあれば、成人の在宅医が小児を担当することは、十分に可能である。
また、脳幹部グリオーマの療養を安楽に行なえるように症状をコントロールする方法の確立が必要。特に痙攣という症状に関する対応の確立が急務である。
きょうだいへの精神的支援の問題もある。突然、普通の家庭のそれまでの状況が一変する。きょうだいへの精神的負担やショックへのケアも同時に行なわれるべき。グリーフケアという観点も早い段階から導入していくべきだし、闘病を終えた家族へのケアも必要。
病院と家庭というものの中間にあるホスピスのような施設の整備も必要。チャイルドケモハウスのような施設の有用性も語られました。
告知の問題。患児に、ストレートに告知することは出来ない。子どもに分かる優しい言葉で病気の現状を伝える。これには正解はない。
多くの家族が、心ない言葉に傷ついた等のネガティブな経験をする。そもそも国民一般が、「がん」というものを正しく知らないため、誤解が生じる。社会的な啓蒙活動、いわゆる「がん教育」の必要性。
国では成育基本法を成立させ、小児の医療、保健、福祉を出産の段階から包括的に制度化していく事を考えている。その中で「がん教育」も位置づけていきたい。
地域格差が深刻。地方では満足のいく療養環境が無い場合がまだまだ多い。
以上のような「緩和ケア」という大きな課題に様々な視点からの議論が交わされ、第二部は終了しました。
ここで、お孫さんをこの病気で亡くされた経験をもとに啓蒙活動をされている、歌手 菅原洋一さんと息子さんの菅原偀介氏が多忙の中、駆けつけてくださり、歌を披露していただくというサプライズがありました。
◎ワークショップ会議
第一部、第二部の議論を受けて、参加者全員で現状の問題点について考える「ワークショップ会議」を行いました。
あらかじめ、「治療開発」と「緩和ケア」という2つのテーマから、参加者の皆様が話したいテーマを選択していたただき、
それぞれ4~12名のグループを作りました。テーマに沿った専門家が各一名ずつ各グループのモデレーターとなっていただき、運営委員からなるサブリーダーとともにグループ議論を進めていくという企画です。
どうしても、専門家からの情報を一方的に受け取るだけになりがちなこういったシンポジウム企画に、参加者側からの声を取り入れて行く事はできないか、また、誰もが当事者という意識を持っていただいて、この病気の問題を考えて行くことが大切であろうという主旨で行なわれました。
なかなか一般人が日常で語ることができないテーマであり、また少人数のグループという気安さもあり、それぞれ活発な議論が交わされました。
第三部 「第一部と第二部の課題と対策」
1、「治療・研究開発」を巡って
各グループのワークショップの結果の要約を提出していただき、モデレーターをお願いした原先生、中野先生のお二人に、論評を加えつつ、その結果を発表していただくという手順を取りました。
○治療研究の正しい信用できる情報の発信をどこかが行なうべきである。・・・専門家より精査された情報を患者会等で発信する
○治療法が無い中、放射線の再照射で一定の成果が出ているが、倫理的に行なえないとする施設・医療者もいる・・・実施している施設の情報を集約し、再照射の手引き的なものを作るべき。
○検体の絶対数が少ない。生検の困難さ・・・数少ないデータの集約が必要。
○開発費が少ない・・・希少疾患は開発費の回収ができず成り立たない。薬の開発を進める開発ルートや制度の確立。
○認知度の低さ・・・啓蒙活動を広げる。
○治療の選択肢がない・・・国際共同治験へ参加の道筋を作る。
・・・等の意見が出されました。
2、「緩和ケアの在り方」を巡って
同様に、モデレーターの浅原先生、天野先生より、各グループの議論の結果を発表していただきました。
○病院から在宅へつなげない・・・成育やあおぞら診療所のような優れたモデルケースを全国に普及させるべき。
○小児在宅医の不足・・・成人の医師でも小児を診れる医師をリストアッブする。
○小児在宅医療に関するスタンダードがない・・・小児、その中でも小児がんの知識のある医師はわずかしかいない。
小児がんの在宅治療に関する基本的な指針、医療の手引き的なものを作り普及させていく事で解決を図る。
○地域の連携・・・病院と訪問医、看護師の連携がとれていない。
○最初から在宅が必ずしも100%とるべき理想の選択というわけではないという観点も必要なのではないか。最終的にどういう療養がその子にとって大切かを考え、その方法として在宅や病院での療養があるべき。
○家族の悩みの持って行き場所がない・・・病気になったときに相談できる地域の窓口が必要。
○小児在宅医療・緩和ケアに関するガイドラインの策定・・・全国の医療者に広めて行く。
・・・以上のような活発な議論が各グループで交わされました。
今回交わされた様々な議論を、その場限りにせず、現状改善への貴重な参考意見として生かしていきたいと思います。
以上で今回のプログラムは終了しました。最後はクロージングセレモニーとして、高木委員長から開催支援者・協力者へのお礼と、次回の開催についての予告が語られました。
様々な観点からこの病気を取り巻く現実と、その解決法を探っていくための第一歩として、第二回シンポジウムは行なわれました。
勿論、一朝一夕には解決は難しいテーマばかりというのが、増々深く認識された感もある一方で、何とか現状を一つ一つ変えて行こう動きも見えてきました。何より、このDIPGという難攻不落の病気に立ち向かおうとする人々がこれだけ存在しているということ。それをあらためて確認できた意味は大きいと思います。
まだまだゴールは遠いのですが、当委員会としても、次回のシンポジウム開催を含め、諦めず粘り強い姿勢で、協力していだいた皆様とともに、多くの課題解決のために、今後も活動を継続していきたいと思っています。
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