2017年10月 アーカイブ

2017年10月30日 0時18分52秒 (Mon)

「小児脳幹部グリオーマ」シンポジウム

「小児脳幹部グリオーマ」シンポジウム10月28日(土)、「小児脳幹部グリオーマ」シンポジウムが開催されました。
三年前より、高木伸幸さんの提唱で始まった「署名プロジェクト」ですが、昨年、厚生労働大臣への署名提出という形でひとつの大きな区切りとなったことは前回のブログでもお伝えしました。
「署名プロジェクト」は各制度の問題点の改善や治療研究の促進を提唱していますが、次の段階として、では、その解決には現実問題として何をしていったらいいのか?という点を考えて行かなければなりません。
そして、それは一朝一夕で解決できるものではありません。プロジェクトチームでは、まず、この問題意識を単に一つの患者会や、専門家が認識するだけではなく、広く大きな国民的広がりとすることで解決をはかりたいと考えています。その手始めとして、まず、多くの問題点を表面に出して、共有して行くことが重要ということで、その一環としてこのシンポジウムも企画されました。

今回は、総勢9名という各分野の専門家の方にご協力いただき、それぞれのテーマでご講演いただいたあと、その後、講演者全員でのパネルディスカッションという形式を考えました。

まず冒頭、委員長の開会の言葉に続き、これまで大きなご協力をいただいている参議院議員の羽生田俊氏、また今回の会場となった成育医療研究センターのセンター長 松本公一氏から励ましとイベントの成功を祈る暖かいご挨拶いただいたきました。

第一部は「治療・研究」に関する講演です。

講演者 東京慈恵会医科大学病院 脳神経外科 柳澤隆昭氏、国立がんセンター 特任研究員 中野嘉子氏、国立成育医療研究センター 脳神経腫瘍科医長 寺島慶太氏、同センター脳神経外科医長 荻原英樹氏、AMED戦略推進部 原田英治氏

まず柳澤氏からDIPGという病気の概要と現状の治療状況をお話しいただき、次の中野氏には、細胞・遺伝子レベルの研究について非常に難解な専門的なお話を、一般にも分かり易く噛み砕いてお話しいただきました。
それに続き寺島氏による遺伝子レベルでの研究、近年の国内外の治療研究・臨床試験の現状をお話いただきました。
そして、その研究に不可欠な要素としての「生検」としいう問題。荻原氏には実際の生検がどのように行なわれているかという解説をしていただきました。
また、原田氏にはAMEDという政府の医療研究開発機構の研究支援への役割についてもお話しいただきました。

一連のお話から、ありとあらゆる臨床試験が効果がなかった時代から、遺伝子研究の時代になり、これまでに無かったさまざまな方法でこの病気治療へのアプローチが行なわれている点、近年の遺伝子解析技術の飛躍的発達は、この難攻不落の病気の正体とその治療法確立に向けて徐々にねじりよって来ているという感想を持ちました。

その後のパネルディスカッションでは、このような希少疾患に対する研究支援体制は、まだまだ十分ではないこと。海外での研究との連携が大事であるが、その基盤が出来ていないこと。AMEDとしては、希少疾患としても、その研究が大きな社会的貢献になれば支援していく道筋はあるということ。そして、何より生検という大問題。治療の選択肢があれば効果が未知であっても生検を受けさせたいかという会場への質問に多くの方が賛同されていたのが印象的で、これは賛否両論あるでしょうが、今後の治療研究を考える上で重要な問題となってくると思います。

第二部は「QOL・支援・末期の療養とグリーフケア」に関する講演です。

講演者 あおぞら診療所医師 天野功二氏、国立医療研究センター ソーシャルワーカー 鈴木彩氏、厚労省 難病対策課 田中彰子氏、同省 障害保健福祉部 朝川知昭氏、グリーフカウンセリングivy-グリーフカウンセラー 浅原聡子氏

今回は、QOLといっても、様々な課題がある中で、特に子ども達の療養環境を考える上で、在宅での療養の実現が重要なのではないかという視点に絞っての講演ラインナップとなりました。
天野氏からDIPGの患者は末期在宅医療を希望する方が多いこと。しかし、小児を担当できる・・それも小児がんの患者を診られる在宅医や医療者が不足している点などが指摘されました。
また、鈴木氏から療養の環境を作る要であるソーシャルワーカーの役割についてのお話、成育医療研究センターの患者支援体制と小児病院の中心的存在としての役割についてのお話がありました。
次に厚労省のお二人からの各支援制度の解説がありました。小児慢性制度の解説を田中氏が、障害者支援制度に関して朝川氏に解説いただきました。身体障がい者手帳交付に際してのハードルである「症状固定」という条件が制度関係者に誤解されて認識されている点、この病気では十分に条件を満たしているというお話を聞けたことは大きな成果だったと思います。
最後は浅原氏による「グリーフケア」についてのお話で、「喪失」の悲しみは、「その後」ではなく、「その予感」から始まっており、闘病中のケアへの重要性が語られましたが、いずれにせよ個々の心の問題は、共通した解答やマニュアルは無い課題であるというお話は印象的でした。

その後のパネルディスカッションでは、参議院議員の丸川珠代氏にも加わっていただき、活発な議論が交わされました。
冒頭に、病院によっての公的支援制度への認識にばらつきがあること。闘病中の手続きの困難さが当会会員の経験を交えて語られました。より良い療養環境の実現には経済的な支援が不可欠ですが、現状の制度への認識が各地域によってバラつきがあるために十分な支援が行き渡っていないということ。これが当プロジェクトの大きな課題の一つですが、丸川氏からは、国が強制的に各地方自治体に命令することは実は困難であり、この改善には国民側からの大きな声を上げていただくことが不可欠であるという意味の回答をいただきました。当プロジェクトとしてもこの課題をどう解決していくか今後とも検討を続けたいと思います。

以上のような実に6時間近くに及ぶ、各講演・パネルディスカッションの後、寺島氏による本日のイベントの総括があり、何よりこの大きなイベントが実現できたことが画期的であり意義のあることだという意味のお話をいただきました。
そして委員長による講演者、参加者の皆様、クラウドファンディング等を通じてご協力いただいた後援者の皆様への謝辞と、「天使からの虹色レター」企画のお願い、そして会場全体での写真撮影で幕を閉じました。

現在、主催者側としては、このような大きなイベントが何とか実現できた充足感で一杯ではあります。
しかし、いろいろな課題も残ったシンポジウムだったと思います。今後も皆様から多くのご協力をいただきながら、課題解決に向け、一歩一歩進んでいき、また、今回の皆様とともに作り上げたこの輪を広げて行ければと考えています。

今回ご協力いただいた全ての皆様に心より感謝致します。ありがとうございました。

なお、今回の模様は、動画として後日公開される予定となっております。

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