この病気について

小児脳幹部グリオーマ(脳幹部神経膠腫)という病気と治療
 
 
●「脳幹部グリオーマ」とは?

脳を構成する細胞は、大きく2種類があります。神経活動を起こす神経細胞と、その神経細胞の周りに存在して神経細胞の働きを助ける神経膠(しんけいこう)細胞があります。英語で膠(こう)細胞はグリア細胞と呼ばれています。「オーマ」は腫瘍という意味です。
すなわち「脳幹部グリオーマ」とは脳の中枢である脳幹部分の神経膠細胞に発生した腫瘍のことです。


●腫瘍の種類
脳幹は脳の中枢にあり、上から中脳 (黄)・橋( 橙)・延髄 (桃)と呼ばれる部分で構成されています。

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脳幹部グリオーマには、主に二種類があり、MRIで判断します。
・脳幹全体が腫れたようなびまん性の型 (左の写真)
 最も予後(病気の推移)が悪いものが、この橋部に発生する「びまん性内在性橋部グリオーマ」です。
・脳幹の一部に腫瘍が発生している限局型 (右の写真)

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「びまん性」とは周囲の脳との間に境目がはっきりしない 状態のことです。
脳幹全体が腫れたようにMRIで見えます。その ほとんどが悪性です。
限局型は良性のグリオーマが多いとされています。 

●一般的な症状
脳幹は血圧、呼吸、意識等、生命活動にとって重要な働きがある神経が集まっています。脳幹に腫瘍などの障害があれば、生命の維持が困難になります。
・頭痛と吐き気
・顔がゆがむ、まぶたがとじなくなるなどの顔の動きの麻痺。
・眼の動きの障害。
・手・足の麻痺
・ふらつき、歩行困難。
・飲み込みや声を出す筋肉の麻痺。
などの症状が出て、最悪の場合、血圧、呼吸、意識の維持が困難になります。

 

小児脳幹部グリオーマの治療

小児脳腫瘍の細胞組織の種類は100種類以上あるといわれており、同じ脳幹部腫瘍でもその性質は人により様々です。ここでは「典型的」といわれる脳幹部グリオーマにの治療についてだけ述べます。

・脳幹の一部の外側に、腫瘍がおできのように出来ている限局型は摘出も可能とされています。

問題は、悪性のびまん性のものです。びまん性のものとは脳幹部の神経にべったりと塗り込んだような状態の腫瘍のことです。これは正常な脳との境界が分かりにくく、脳幹に集中する重要な神経を傷つけずに手術で摘出することは大変困難です。

・治療法は、放射線の単独治療しかありません。これが世界的に認められた「標準治療」です。
標準治療とは、臨床試験や過去の経験によって科学的に証明された最も効果が期待できる治療法ということです。
放射線治療にテモダール等の化学治療(抗がん剤治療)を併用した場合も、ほとんどその効果に差はなく、副作用その他の患者への負担を考えると、現在のところ放射線のみの単独治療がもっとも望ましい治療法とされています。

多くの場合、放射線治療によって腫瘍の縮小や症状の改善が認められます。ただし、その効果の現れ方には個人差があり、放射線治療が全ての患者に100%の効果があるとは言えません。残念ながら効果がなく、症状の回復がみられない場合もあります。効果があっても限定的な回復しかみられない場合もありますし、治療後1、2ヶ月経って効果が出てくる場合もあります。

・また、スード・プログレッションと呼ばれる画像上の増大が認められる場合があります。
それについては以下のリンクをご覧下さい。


http://plaza.umin.ac.jp/sawamura/braintumors/pseudoprogression/

・しかし、ほとんどの場合、放射線治療の効果も一時的であり、治療終了後、半年から一年で腫瘍が再増大し、その場合の腫瘍は以前より悪性度を増しています。

・放射線の効果が現れた期間をハネムーン期間と呼び、この時間をいかに大切に使うかということが大切です。

・その後、「再燃」といいますが、腫瘍が再発してくることがほとんどです。腫瘍の増大をなるべく抑えたり、神経症状の改善のために、ステロイド薬の投与や維持療法としてのテモダールやラステッドという抗がん剤での治療も行われていますが、決定的な治療法は残念ながら確立していません。

・発症から亡くなるまでが一年以内という確率は50パーセントとも言われ、小児脳腫瘍の中でも最も死亡率が高いものといわれています。
 
・その原因は、この腫瘍の強い抵抗性によるもので、放射線も化学治療も施された直後はそれなりの効果が見られる場合もありますが、結局は腫瘍がそれらを跳ね返す強い抵抗力を持ってしまうことが知られています。
 
・この腫瘍の強靭な抵抗性は、遺伝子の異常からくることが近年、解明されつつあります。この遺伝子異常を正常に回復させる治療法の確立こそが、この病気の治療には必要です。

・しかし、それでも治療の推移は人それぞれで、「例外」もあり得ます。数年にわたり生存されている方ももちろんいらっしゃいます。
ちなみに私の娘の腫瘍はごく最初期に偶然発見されましたが、発見から亡くなるまで約三年でした。

・ただし、三歳前後までのお子さんの場合、治癒する可能性も高いとされているようです。これはがん細胞の質が、それ以後の年代と異なっているためかもしれないということです。


・既製の抗がん剤だけではなく、免疫療法という治療法も近年、注目されてきています。ですが、これはまだ研究段階のものであり、はっきりとした効果は確認されていないようです。


・ある医師によれば、インターフェロン療法や商業的な免疫療法は特殊な免疫を刺激するだけなので、もともと自然の監視をのがれて発生したがん細胞に対しての効果はあまり期待できないということです。

・しかしながら、これは私の私見ですが、この小児脳腫瘍という病気は100種類にも及び、いわば、その治療もその都度、患児ひとりひとりへのオーダーメイドようなものにならざるを得ません。
ある患児に効いた治療が他の患児に効果があるとは限らないのです。
特にこの脳幹部グリオーマは決定的な治療法が無いのですから、逆に言えば何でも試してみるということも、あながち間違いではないと思います。
ただし、ここで問題となるのは、時間と副作用です。

患児の人生や生活の質を考えた治療を

・このように一般的に言って、いわゆる典型的なびまん性脳幹部グリオーマと診断されたお子さんの治癒は大変困難とされています。こうした中で、当然ながらどういった治療がご本人にとってベストであるかを第一に考えるべきでしょう。

・そこで、近年前面に出て来たのが「生活の質」(QOL)という考え方です。
限られた時間をできるだけ充実させてあげるということです。
治療はもちろん大事ですが、人生は一度きりです。

・きつい副作用も覚悟し、ある治療に賭けてみるという人生ももちろんあります。
しかし、単なる対処療法であっても痛みが少しでもとれる時間を作って本人がしたいことをさせてあげるというのも大事です。それが治療への励みにもなると思いますし、免疫力の向上にも寄与することになります。
欧米では、あえて無治療という選択肢を医師が提示することもあるそうです。

・いずれにせよここに正解といえるものはないと思います。

主治医とよく話し合い、患児の人生とのバランスの上で、納得のいく治療を行っていくというのが当然ながら重要になってくると思います。

(以上は、日本小児脳腫瘍コンソーシアムのホームページから大阪市立総合医療センター小児脳神経外科  坂本博昭先生の解説と、さわむら脳神経クリニック 脳神経外科 澤村豊先生のホームページの解説、mixi上のコミュニティ「小児脳腫瘍」、当掲示板の議論を参考にしました。さらに詳細な解説はリンクのページに各ホームページのアドレスを貼ってありますので、そちらをご覧いただければと思います)

 



 

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